NISAなら確定申告は不要?【原則と例外を理解する】
NISA(少額投資非課税制度)は、投資から得られる利益が非課税になる、とてもお得な制度です。この「非課税」という点が、確定申告とどのように関係するのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。NISAを利用している場合、確定申告は基本的に必要なのでしょうか、それとも不要なのでしょうか。ここでは、NISAと確定申告の関係について、基本的な考え方から、例外的なケースまで、詳しく解説していきます。
NISAの利益は非課税!原則、確定申告は不要
NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)で得た利益は、非課税となるため、原則として確定申告は必要ありません。これが、NISAの最大のメリットであり、多くの方がNISAを利用する理由の一つです。
通常、株式や投資信託などの金融商品を売却して利益が出たり、配当金や分配金を受け取ったりすると、その利益に対して約20%の税金がかかります。そして、この税金を納めるために、原則として確定申告が必要になります。しかし、NISA口座でこれらの取引を行った場合は、どれだけ利益が出ても税金がかかりません。つまり、確定申告の手続きも不要になるのです。
例えば、NISA口座で100万円の投資信託を購入し、120万円に値上がりしたところで売却したとします。通常であれば、20万円の利益に対して約4万円の税金がかかりますが、NISA口座ならこの税金がかからず、20万円の利益がまるまる手元に残ります。そして、この20万円について、確定申告をする必要もありません。
確定申告が必要になる「例外ケース」とは?
NISA口座で取引している場合でも、確定申告が必要になる例外的なケースがあります。具体的にどのような場合か、確認していきましょう。
原則不要なケースがほとんどですが、確定申告が必要となる例外ケースを知っておくことでNISAの理解を深めることになります。
例えば、「海外赴任になった場合」などがあげられます。
- 海外赴任になった場合 NISA口座を開設できるのは、原則として日本国内に居住している方です。年の途中で海外赴任(出国)などにより非居住者となる場合、その年分の非課税投資枠の利用状況などに応じて、確定申告が必要となる場合があります。
上記以外にも、細かな条件によって確定申告が必要となる場合がありますので、
心配な場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
次の見出しからは、より一般的で、より注意が必要な「NISA口座以外」での取引で確定申告が必要となるケースについて解説していきます。
NISA口座以外で注意すべきケース【確定申告が必要な場合】
NISA口座での取引は原則として確定申告が不要ですが、NISA口座以外の課税口座(特定口座や一般口座)で取引をしている場合は、注意が必要です。ここでは、NISA口座以外での取引で、確定申告が必要になる主なケースについて解説します。
NISA口座以外の課税口座(特定口座・一般口座)で利益が出た場合
NISA口座とは別に、課税口座(特定口座や一般口座)で投資を行い、利益が出た場合は、確定申告が必要になることがあります。課税口座とは、NISA口座のように非課税の特典がない、通常の投資口座のことです。課税口座での取引で得た利益には、約20%の税金がかかります。
特定口座と一般口座の違いは、以下の通りです。
- 特定口座: 金融機関が年間の損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれます。
- 源泉徴収あり: 利益から税金が自動的に天引きされるため、原則として確定申告は不要です。
- 源泉徴収なし: 自分で確定申告をする必要があります。
- 一般口座: 年間の損益計算や確定申告を自分で行う必要があります。
特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合は、金融機関が自動的に税金を徴収してくれるため、原則として確定申告は不要です。しかし、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引をしている場合は、年間の利益が20万円を超える場合(給与所得者の場合)など、一定の条件に該当する場合は確定申告が必要になります。
例えば、給与所得者の方が、NISA口座とは別に一般口座で株式投資をしており、その年の株式の売却益が30万円あったとします。この場合、30万円から、株式を取得するためにかかった費用と売却手数料を差し引いた金額が20万を超えていると、確定申告が必要になります。
複数の金融機関で特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合
複数の金融機関で特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合、損益通算や繰越控除を行うためには確定申告が必要です。損益通算とは、複数の口座で生じた利益と損失を合算することです。繰越控除とは、その年に控除しきれなかった損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越して、利益と相殺することです。
例えば、A証券の特定口座(源泉徴収なし)で50万円の利益、B証券の特定口座(源泉徴収なし)で30万円の損失が出たとします。この場合、確定申告をすることで、2つの口座の損益を通算し、課税対象となる利益を20万円に減らすことができます。また、損失が利益を上回る場合は、その損失を翌年以降に繰り越すことができます。
特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合は、金融機関が自動的に税金を徴収してくれるため、原則として確定申告は不要ですが、損益通算や繰越控除のメリットを受けることはできません。
上場株式等の配当金を「配当金領収証」で受け取った場合
上場株式等の配当金を、証券会社の口座ではなく、「配当金領収証」などの方法で受け取った場合は、確定申告が必要になることがあります。「配当金領収証」とは、郵便局などで現金と引き換えられる証書のことです。
通常、上場株式等の配当金は、証券会社の口座で受け取る場合、自動的に源泉徴収が行われます。しかし、「配当金領収証」で受け取った場合は、源泉徴収が行われていない場合があるため、注意が必要です。源泉徴収されていない配当金を受け取った場合は、原則として確定申告が必要になります。
ただし、1回の支払金額が少額である場合など、一定の条件を満たす場合は、確定申告が不要になることもあります。詳しくは、税務署や税理士に確認することをおすすめします。
【要注意】確定申告をすると「損をする」ケースも
NISA口座を利用している方が確定申告を行う場合、注意しなければならない点があります。それは、確定申告をすることで、かえって税金が増えてしまったり、受けられるはずの控除が受けられなくなったりするなど、「損をする」ケースがあるということです。ここでは、確定申告をすることで損をする可能性のある、代表的なケースについて解説します。
NISA口座の損失は、損益通算や繰越控除ができない
NISA口座で損失が出た場合、その損失は税務上なかったものとみなされ、他の口座の利益と損益通算したり、損失を繰り越したりすることはできません。これは、NISA口座の大きな注意点の一つです。
通常、課税口座(特定口座や一般口座)で損失が出た場合は、他の口座の利益と損益通算することができます。例えば、A証券の特定口座で50万円の損失、B証券の特定口座で30万円の利益が出た場合、確定申告をすることで、2つの口座の損益を通算し、課税対象となる利益を0円にすることができます(損失の方が大きいため)。
しかし、NISA口座で損失が出た場合は、この損益通算ができません。例えば、NISA口座で50万円の損失、特定口座(源泉徴収なし)で30万円の利益が出た場合、確定申告をしても、NISA口座の損失は考慮されず、特定口座の30万円の利益に対して税金がかかってしまいます。
また、課税口座で損失が出た場合は、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺することができます(繰越控除)。しかし、NISA口座の損失は繰越控除もできません。つまり、NISA口座で損失が出た場合は、その損失を税制上のメリットに活用することができないのです。
配当金控除や所得控除に影響が出る場合がある
確定申告をすることで、配当金控除が受けられなくなったり、扶養控除などの所得控除に影響が出たりする場合があります。特に、配偶者控除や扶養控除を受けている方は注意が必要です。
配当金控除とは、一定の配当所得について、税額を軽減できる制度です。しかし、NISA口座で受け取った配当金は、そもそも非課税であるため、配当金控除の対象にはなりません。課税口座で受け取った配当金について、確定申告不要制度を選択している場合は、配当金控除を受けることはできません。確定申告をすることで配当金控除を受けられますが、総合課税となり税率がかわるため、かえって税金が増えてしまう場合もあります。
また、確定申告をすることで、合計所得金額が増加し、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる場合があります。配偶者控除や扶養控除は、配偶者や扶養親族の合計所得金額が一定以下の場合に受けられる制度です。NISA口座の取引は、原則確定申告不要ですが、他の所得があり、確定申告をすることで、合計所得金額が増加し、これらの控除の適用範囲から外れてしまう可能性があるのです。
例えば、配偶者のパート収入が年間103万円以下であれば、配偶者控除が受けられます(納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。しかし、配偶者がNISA口座以外で投資をしており、確定申告をすることで合計所得金額が103万円を超えてしまうと、配偶者控除が受けられなくなってしまいます。
このように、確定申告をすることで、かえって税負担が増えたり、受けられるはずの控除が受けられなくなったりする場合があります。確定申告をする前に、ご自身の状況をよく確認し、慎重に判断することが大切です。
【ケース別】NISAと確定申告の関係を詳しく解説
NISAと確定申告の関係は、NISA口座だけで取引をしているのか、それとも他の課税口座(特定口座や一般口座)も利用しているのかによって異なります。ここでは、よくあるケース別に、NISAと確定申告の関係を具体的に解説していきます。
ケース1:NISA口座のみで取引している場合
NISA口座のみで取引している場合は、原則として確定申告は不要です。NISA口座で得た利益はすべて非課税であり、税務署に申告する必要はありません。これは、年間の取引回数や利益の額に関わらず、すべてのNISA口座の利用者に共通するルールです。
例えば、
- NISA口座で年間100万円の利益が出た
- NISA口座で年間10万円の損失が出た
- NISA口座で株式を保有し、年間5万円の配当金を受け取った
これらのいずれの場合でも、確定申告は不要です。ただし、前述の通り、海外赴任になった場合など、例外的に確定申告が必要になるケースもありますので注意が必要です。
ケース2:NISA口座と特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合
NISA口座と特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合も、原則として確定申告は不要です。特定口座(源泉徴収あり)では、金融機関が自動的に税金を徴収してくれるため、納税者自身が確定申告をする必要はありません。
例えば、
- NISA口座で年間50万円の利益、特定口座(源泉徴収あり)で年間30万円の利益が出た
- NISA口座で年間20万円の損失、特定口座(源泉徴収あり)で年間10万円の利益が出た
これらのいずれの場合でも、特定口座(源泉徴収あり)の利益については、すでに税金が徴収されているため、確定申告は不要です。ただし、特定口座(源泉徴収あり)で損失が出た場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます(繰越控除)。しかし、NISA口座の損失は、繰越控除の対象にはなりません。
また、特定口座(源泉徴収あり)で、配当金や分配金を受け入れている場合、確定申告をすることで配当控除が受けられ、税金が還付される可能性もあります。ただし、総合課税となり税率が変わるため、還付ではなく、追加で税金を納める必要が生じる場合もあります。
ケース3:NISA口座と特定口座(源泉徴収なし)または一般口座で取引している場合
NISA口座と特定口座(源泉徴収なし)または一般口座で取引している場合は、確定申告が必要になることがあります。特定口座(源泉徴収なし)や一般口座では、金融機関は税金を徴収してくれないため、納税者自身が確定申告をして税金を納める必要があります。
例えば、
- NISA口座で年間50万円の利益、特定口座(源泉徴収なし)で年間30万円の利益が出た
- NISA口座で年間20万円の損失、一般口座で年間10万円の利益が出た
これらの場合、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の利益について、確定申告が必要になります(給与所得者の場合、年間の給与所得以外の所得が20万円を超える場合など)。NISA口座の取引については、確定申告は不要ですが、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の取引については、忘れずに確定申告を行いましょう。
また、複数の金融機関で特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合や、特定口座(源泉徴収なし)と一般口座を併用している場合は、損益通算や繰越控除を行うために確定申告が必要になることがあります。これらの制度を利用することで、税負担を軽減できる可能性がありますので、該当する場合は忘れずに確定申告を行いましょう。
ただし、繰り返しになりますが、NISA口座の損失は、損益通算や繰越控除の対象にはなりませんので注意が必要です。
まとめ:NISAと確定申告の関係を正しく理解しよう
NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)で得た利益は非課税であるため、原則として確定申告は不要です。これは、NISAの大きなメリットであり、多くの方がNISAを利用する理由の一つです。しかし、NISA口座以外の課税口座(特定口座や一般口座)で取引をしている場合や、上場株式等の配当金を「配当金領収証」で受け取った場合など、例外的に確定申告が必要になるケースもあります。
また、NISA口座で損失が出た場合、その損失は税務上なかったものとみなされ、損益通算や繰越控除ができないことにも注意が必要です。さらに、確定申告をすることで、配当金控除が受けられなくなったり、扶養控除などの所得控除に影響が出たりする可能性もあります。
ご自身の取引状況をしっかりと把握し、
- NISA口座のみで取引しているのか
- NISA口座以外に、どの種類の口座(特定口座(源泉徴収あり・なし)、一般口座)で取引しているのか
- それぞれの口座で、どれくらいの利益や損失が出ているのか
- 配当金はどのように受け取っているのか
などを確認し、確定申告が必要かどうか、確定申告をすることでメリットがあるのか、デメリットがあるのかを判断することが大切です。
NISAと確定申告の関係は、一見複雑に感じるかもしれませんが、基本的なルールを理解し、ご自身の状況を把握することで、正しく対応することができます。もし、判断に迷う場合や、わからないことがある場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。NISA制度を上手に活用し、賢く資産形成を進めていきましょう。
