ジュニアNISAはなぜ廃止?制度終了の背景と理由
未成年者向けの少額投資非課税制度「ジュニアNISA」は、2023年末で制度が終了しました。なぜジュニアNISAは廃止されたのでしょうか。その背景と理由を解説します。
ジュニアNISAの利用状況:口座数は伸び悩んでいた
ジュニアNISAは、2016年に導入された制度ですが、口座数は当初の想定ほど伸びませんでした。金融庁のデータによると、2022年末時点のジュニアNISA口座数は約107万口座で、NISA口座全体の約6%にとどまっています。これは、制度の使い勝手の悪さや、認知度不足などが要因として考えられます。
制度廃止の理由1:NISA制度の抜本的見直し
ジュニアNISA廃止の大きな理由の一つは、2024年から始まる新しいNISA制度(新NISA)への移行です。政府は、国民の資産形成をより強力に後押しするため、NISA制度の抜本的な見直しを行いました。新NISAでは、年間投資枠や非課税保有限度額が大幅に拡大され、制度が恒久化されるなど、より使いやすい制度となりました。この新NISAへの一本化に伴い、ジュニアNISAは廃止されることになりました。
制度廃止の理由2:利用者のニーズとのずれ
ジュニアNISAは、原則として18歳まで払い出しができないという制限がありました。これは、教育資金など、子どもの将来のための資金を確実に確保するための措置でしたが、急な出費に対応できないなど、利用者のニーズとのずれが生じていました。また、運用管理を親権者が行う必要があるため、子ども自身が投資を学ぶ機会が少ないという点も課題でした。
制度廃止の理由3:資産格差の固定化への懸念
ジュニアNISAは、富裕層が相続税対策として利用するケースも見られ、資産格差の固定化につながるという批判もありました。年間80万円までの非課税投資枠は、富裕層にとっては有利な制度ですが、一般の家庭にとっては必ずしも使いやすい制度とは言えませんでした。
ジュニアNISA廃止後の代替制度:未成年者はどう投資する?
ジュニアNISAは廃止されましたが、未成年者が投資を全くできなくなったわけではありません。ここでは、ジュニアNISAに代わる、未成年者のための投資方法を紹介します。
代替制度1:新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)
2024年から始まった新NISAでは、0歳~17歳の未成年者は「つみたて投資枠」を利用できます。「つみたて投資枠」は、年間120万円まで、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資できる制度です。
新NISA「つみたて投資枠」の概要
- 年間投資枠:120万円
- 非課税保有限度額:1800万円(18歳以上と共通)
- 対象商品:長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
- 投資方法:積立投資のみ
ジュニアNISAとの違い
新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)とジュニアNISAの主な違いは、年間投資枠(ジュニアNISAは80万円)、対象商品(ジュニアNISAは株式も対象)、払い出し制限(ジュニアNISAは原則18歳まで不可、新NISAは制限なし)です。新NISAでは、より多くの金額を、より柔軟に運用できるようになりました。
代替制度2:課税口座(特定口座・一般口座)での運用
未成年者でも、親権者の同意があれば、証券会社に課税口座(特定口座または一般口座)を開設し、株式や投資信託などに投資することができます。課税口座での運用益には税金がかかりますが、年間投資額や投資対象商品に制限はありません。より積極的に投資に挑戦したい場合は、課税口座の利用も検討しましょう。
代替制度3:贈与を活用した運用
祖父母や親から子や孫への贈与を活用して、子どもの資金で投資を行う方法もあります。年間110万円までの贈与は非課税となるため(暦年贈与)、この範囲内で資金を贈与し、子どもの名義で運用することができます。ただし、贈与税のルールには注意が必要です。また、誰の資金で運用しているかを明確にしておく必要があります。
ジュニアNISAの復活はあり得る?今後の展望
ジュニアNISAは2023年末で廃止されましたが、将来的に復活する可能性はあるのでしょうか。ここでは、今後のNISA制度の展望について解説します。
現時点ではジュニアNISA復活の予定はない
現在のところ、政府からジュニアNISAを復活させるという発表はありません。新NISA制度が始まったばかりであり、当面は新NISAの普及と定着に注力するものと考えられます。ジュニアNISAの代替としては、新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)や課税口座の活用が考えられます。
NISA制度は今後も改正される可能性がある
NISA制度は、これまでも何度か改正されてきました。今後も、社会情勢や経済状況の変化、利用者のニーズなどを踏まえて、制度が見直される可能性があります。例えば、未成年者の投資ニーズが高まれば、新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)の年間投資枠が拡大される、あるいは新たな未成年者向けの非課税投資制度が創設される可能性もゼロではありません。NISA制度の動向には、引き続き注目していく必要があります。
ジュニアNISA口座の既存保有商品の取り扱い
ジュニアNISAは制度が終了しましたが、2023年末までにジュニアNISA口座で購入した商品はどうなるのでしょうか。ここでは、既存の保有商品の取り扱いについて解説します。
2023年末までに購入した商品は18歳まで非課税で保有可能
2023年末までにジュニアNISA口座で購入した商品は、口座名義人が18歳になるまで(正確には、18歳になる年の1月1日以降に開設される継続管理勘定で)、引き続き非課税で保有できます。新NISAが始まったからといって、すぐに課税対象になるわけではありません。
2024年以降は年齢に関わらず払い出しが可能に
ジュニアNISAは、原則として18歳まで払い出しができないという制限がありましたが、制度廃止に伴い、2024年以降は年齢に関わらず非課税での払い出しが可能になりました。これにより、急な出費が必要になった場合などでも、柔軟に対応できるようになりました。
非課税期間終了後の手続き
ジュニアNISA口座で保有している商品が非課税期間(18歳になるまで)を終了した場合、以下のいずれかの手続きが必要になります。
- 課税口座(特定口座または一般口座)に移管する
- 売却して現金化する
課税口座に移管した場合は、その後の運用益に対して税金がかかります。非課税での運用を続けたい場合は、新NISA口座で新たに投資を行うことを検討しましょう。
【Q&A】ジュニアNISA廃止に関するよくある質問
ジュニアNISA廃止に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1:ジュニアNISA口座は自動的に新NISA口座に切り替わる?
A1:いいえ、自動的には切り替わりません。ジュニアNISA口座は、新NISA口座とは別の口座として扱われます。ジュニアNISA口座で保有している商品は、18歳になるまで非課税で保有できますが、新NISA口座で新たに投資を行う場合は、別途新NISA口座を開設する必要があります(ジュニアNISA口座を開設していた金融機関で自動的に開設されている場合もあります)。
Q2:ジュニアNISAで保有している商品を新NISAに移管できる?
A2:いいえ、できません。ジュニアNISAで保有している商品を、新NISA口座に直接移管(ロールオーバー)することはできません。ジュニアNISAの商品は、非課税期間が終了するまでジュニアNISA口座で保有し続けるか、売却して現金化することになります。
Q3:ジュニアNISAの払い出し制限はなくなった?
A3:はい、なくなりました。ジュニアNISAは、原則として18歳まで払い出しができないという制限がありましたが、制度廃止に伴い、2024年以降は年齢に関わらず非課税での払い出しが可能になりました。
Q4:未成年が新NISAを利用する際の注意点は?
A4:新NISAでは、未成年者(0歳~17歳)は「つみたて投資枠」のみ利用できます。「つみたて投資枠」は、年間120万円まで、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資できます。
また、未成年が新NISAを利用する場合でも、口座の開設自体は可能ですが、実際の運用管理は親権者等が行うことになります。
まとめ:ジュニアNISAは廃止。未成年は新NISA「つみたて投資枠」などを検討しよう
ジュニアNISAは、2023年末で制度が終了し、新規の買い付けはできなくなりました。制度廃止の背景には、NISA制度全体の抜本的な見直しや、ジュニアNISAの利用状況、利用者のニーズとのずれなどがありました。
ジュニアNISAに代わる未成年者の投資方法としては、新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)や、課税口座(特定口座・一般口座)での運用などが考えられます。新NISAの「つみたて投資枠」(未成年)は、年間120万円まで、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に投資できます。
2023年末までにジュニアNISA口座で購入した商品は、18歳になるまで非課税で保有でき、2024年以降は年齢に関わらず非課税での払い出しが可能です。
現時点ではジュニアNISAの復活の予定はありませんが、今後のNISA制度の改正には注意が必要です。
未成年者の投資は、親権者等が運用管理を行うこと、長期的な視点を持つこと、リスクを理解することが大切です。新NISAの「つみたて投資枠」などを活用し、子どもの将来のための資産形成を検討しましょう。
